華厳教では、善財童子が悟りを求めて五十三人の善知識を訪ねる旅をします。
その旅の終盤、南方の海上にある光明の山「ポータラ」に至り、彼は観音菩薩と出会います。
観音菩薩は深い慈悲と智慧をもって善財に接し、一切衆生を救済する菩薩行を身をもって示します。
善財は観音の慈悲の力に触れ、「体そのものが法を説く」という教えを受け、真の救済は形式ではなく、生きる姿勢そのものに宿ると悟るのです。
華厳思想の核心である「一つの出会いが全宇宙と繋がる(一即一切)」を体現する場面として、仏教の実践的慈悲観を象徴しています。